2024年度 第3回 ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級実技試験 Part 2 (2025年2月16日)過去問解説

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きんざいが制作していたFP受検対策に関する書籍は、今後制作・販売されません。

そこで、僕が実技試験対策本のKindle版セット版を制作しました。

合格率1割の難関試験、FP1級学科試験。しかし、学科試験を合格しただけではFP1級技能士の称号は与えられません。
FP1級技能士としての資質が審査される。FP1級実技試験が待っています。

実技試験は学科試験と違い合格率8割以上です。だからといって油断していると足をすくわれます。
合格率1割の難関試験突破者が2割も落ちているんですよ。

1級学科の勉強を始める時に、2級や3級の問題集やテキストは本屋さんにたくさん置いてあるのに1級の本はほとんど置いてなく注文して購入した方も多いのではないでしょうか。
FP1級実技試験は学科試験以上に情報量が少なく、大きめの書店でもテキストを見かけることは滅多にありません。

そんな、謎多きFP1級実技試験の過去問を解説します。

動画はこちら

試験当日の標準的なスケジュールは以下の通りです。

  1. 控室で待機(待機中は紙媒体の参考書等は見ることができます。電子機器は使えません)
  2. 設例を読む机に移動(約15分間設例を読みます。設例にメモやマーカで印をつけます)
  3. 面接試験室へ移動(心の準備ができたらノックして入室。約12分の口頭試問試験が始まります)
  4. 面接終了後、控室へ移動(次の試験まで待機)

設例を読むところから試験は始まっています。設例を読み理解することもトレーニングだと思って、タイマーを15分間セットしてメモをとりながら読んでみてください。


それでは、設例をお読みください。

2024年度 第3回 ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級実技試験 Part 2 (2025年2月16日)

●設 例●

 Aさん(55歳)は、2年前に父Bさんから相続した甲土地を所有している。甲土地は40年前に父Bさんが知人のCさん(75歳)に賃貸した土地であり、その土地上には現在もCさん所有の甲建物がある。Cさんは甲建物の1階で妻と飲食店を営み、2階に居住していたが、2年前に、妻が亡くなり、自分も高齢になり体力に自信がなくなったことから昨年飲食店を閉店し、現在は1人で2階で暮らし、1階は物置になっている。

 1週間ほど前、CさんがAさんのもとを訪ねてきて、「甲土地の借地権を譲渡したい。譲渡予定先である不動産業者から、Aさんから譲渡承諾、条件変更承諾、建替承諾をもらう必要があると言われたのでお願いにきた」と相談を受けた。

 Aさんとしては、固定資産税・都市計画税の水準を考えれば、現在の甲土地の地代が安いこと(収益性が極めて低いこと)、不動産業者に譲渡されるとおそらくマンションに建て替えられて、この先、何十年も借地権の解約ができないと思われること、甲土地は利便性が高い場所に立地していることから、完全な所有権であれば、相応の価格で売却できるであろうし、自ら有効活用することもできると考え、できれば借地権を買い取りたいと思っている。

 Cさんによると、甲土地に係る固定資産税・都市計画税は、マンションに建て替えられたほうが今より安くなると不動産業者が話しているそうだが、その理由はAさんにはわからない。

 Aさんは、買取価格については、今まで低廉な地代で貸しており、権利金も受け取っていないことから、甲建物の取壊し費用相当くらいの金額が妥当ではないかと考えている。

このような状況で、AさんからFPであるあなたに相談があった。

 

【甲土地・甲建物と借地契約の概要】

  • 甲土地 :地積180㎡、最寄駅から徒歩3分、固定資産税評価額9,400万円、固定資産税・都市計画税715,900円/年

  • 甲建物 :木造2階建て、延べ面積150㎡(店舗用部分80㎡、居住用部分70㎡)、1985年4月竣工、建物登記あり。固定資産税評価額300万円、1階は物置であり2階はCさんの居宅として使用

  • 借地契約:旧借地法による借地(賃借権)。20年前に合意更新し、今年が更新時期にあたる。現行の地代は月額83,000円。権利金の授受はない。非堅固の建物所有目的。更新料については、更新時期に「協議して定める額を更新料として支払う」旨の合意がある。

 

(FPへの質問事項)

  1. Aさんに対して、最適なアドバイスをするためには、示された情報のほかに、どのような情報が必要ですか。以下の①および②に整理して説明してください。
     ①Aさんから直接聞いて確認する情報
     ②FPであるあなた自身が調べて確認する情報

  2. 譲渡承諾、条件変更承諾、建替承諾とはどのようなもので、承諾料は一般にどのように算定しますか。また、Aさんは承諾しなければなりませんか。

  3. 不動産業者が話している甲建物をマンションに建て替えたほうが甲土地に係る固定資産税・都市計画税が安くなるとはどういうことですか。

  4. 甲土地の借地権の買取りと価格について、Aさんにどのようなアドバイスをしますか。

  5. 本事案に関与する専門職業家にはどのような方々がいますか。

 

(注)設例に関し、詳細な計算を行う必要はない。

 

 

出典:一般社団法人金融財政事情研究会 ファイナンシャル・プランニング技能検定 1 級実技試験(資産相談業務)2025年2月 参考:技能検定試験問題の使用について

○○と申します。よろしくお願いします。

よろしくお願いします。
Aさんに対して、最適なアドバイスをするためには、示された情報のほかに、どのような情報が必要ですか?
 ①Aさんから直接聞いて確認する情報は、どのようなことですか?

①Aさんから直接聞いて確認する情報は、
不動産の取得費や取得日がわかる契約書等の資料があるかどうか。
Cさんの意向や関係は良好か。
健康状態や今後のライフプラン。
家族構成やご家族の意向。
収入や資産状況。
相続税対策は検討しているか。

②FPであるあなた自身が調べて確認する情報は、どのようなことですか?

②FP自身が調べて確認する情報は、
⑴現地確認として(外観、近隣状況、住人)
 土地・道路や交通量などの物理的状況を、実際に現地で確認すること。

⑵権利関係として
 法務局で登記事項証明書や公図を請求し、土地の権利状況等を確認すること。

⑶法令上の制限として
 自治体の都市計画課等で、用途地域・都市計画等を確認し、今後の開発予定や周辺環境の変化などを把握すること。

⑷市場調査として
 周辺の取引事例を地元の不動産業者等で確認します。


譲渡承諾、条件変更承諾、建替承諾とはどのようなもので、承諾料は一般にどのように算定しますか。

借地権は土地を借りて建物を建てられる権利です。
あくまで地主から借りている土地なので、借地権を別の人に譲渡する場合や建て替えには地主の承諾が必要になります。

譲渡承諾とはどのようなもので、承諾料は一般にどのように算定しますか。

借地権を第三者へ譲渡する際に地主の承諾を得る必要があります。
譲渡承諾料とは、その承諾を得るにあたって地主に支払うお金です。

譲渡承諾料の相場は、借地権価格の10%程度です。

条件変更承諾とはどのようなもので、承諾料は一般にどのように算定しますか。

借地権の条件変更とは木造などの非堅固建物を所有する目的から、鉄筋コンクリート造などの堅固建物を所有する目的に変更することです。
このような借地契約の契約内容を変更する際には地主の承諾を得る必要があります。

条件変更承諾料とは、その承諾を得るにあたって地主に支払うお金です。

条件変更承諾料の相場は、更地価格の10%程度です。

建替承諾とはどのようなもので、承諾料は一般にどのように算定しますか。

借地権上にある建物を建て替える際には地主の承諾を得る必要があります。

建替承諾料とは、その承諾を得るにあたって地主に支払うお金です。

建替承諾料の相場は、更地価格の5%~10%程度です。

Aさんは承諾しなければなりませんか。

必ずしも承諾する必要はありませんが、承諾しない場合にはCさんは借地非訟裁判を利用して、許可を得ることが可能となります。

借地非訟について教えてください。

借地非訟とは借地人と地主との間に揉め事が生じた時、地主に代わって裁判所に許可を出してもらうための手続きで、借地権譲渡や建物の建替えなどのトラブルで地主の承諾を得られない場合に利用されるものです。


不動産業者が話している甲建物をマンションに建て替えたほうが甲土地に係る固定資産税・都市計画税が安くなるとはどういうことですか。

住宅用の土地については、固定資産税の軽減措置があります。
住宅用地のうち面積が200㎡以下の小規模住宅用地については、固定資産税評価額の6分の1、200㎡を超える部分は3分の1が固定資産税の対象となります。

ただし、家屋が専用住宅でなく店舗併用住宅等の場合は、居住用部分の割合によって軽減措置の適用条件が変わってきます。

甲建物は木造2階建て、延べ面積150㎡、店舗用部分80㎡、居住用部分70㎡です。

店舗併用住宅等の場合で、居住用部分の面積が4分の1以上、2分の1未満の場合は、その土地の50%しか住宅用地の軽減措置が適用されません。
住宅用地の軽減措置が適用されない残りの50%の土地の固定資産税は高くなります。

マンションに建て替えると甲土地全体に住宅用地の軽減措置が適用されるので、固定資産税・都市計画税が安くなると不動産業者は話しているのだと思います。


甲土地の借地権の買取りと価格について、Aさんにどのようなアドバイスをしますか?

甲土地・甲建物と借地契約の概要によると、権利金の授受はなく、現行の地代は月額83,000円とあります。

借地権設定時に権利金等の支払いがなく、また現行の地代が固定資産税相当額程度である場合、その土地の貸付けは使用貸借による貸付けとみなされます。
使用貸借による貸付けの場合には借地権を認識しません。したがって借地権の評価額は0円となります。


FP業務では、色々な専門職業家と連携することもあると思いますが、
今回のケースで関与する、専門職業家には、どのような方々がいますか?

不動産の取引に関する、課税上の具体的な税務相談は、税理士に、
売買契約等における、宅地建物取引業法に規定する業務については、宅地建物取引士に、
土地の所有権移転登記については、司法書士に、
正確な測量と境界の明示、登記については土地家屋調査士に、
測量に基づく適正な不動産価格の算定は不動産鑑定士と連携します。

質問は以上です。お疲れさまでした。

ありがとうございました。失礼いたします。


今回は、借地権の売却、店舗併用住宅の固定資産税、権利金と地代に関する設例でした。

借地関係の解消は実技試験でよく出題されます。

借地関係の解消には、4つの方法があります。

  • 借地権と底地の一部交換によって土地を二分割し、完全所有権化する。
  • 借地人に底地を買い取ってもらう。
  • 地主が借地人の借地権を買い取る。
  • 地主と借地人が協力して第三者に売却する。

それぞれの、メリットデメリットや適用できる課税上の特例などを整理して覚えましょう。

FP1級実技試験の難しさは「自分の言葉で相手に伝える」ことだと思います。何度も声に出して読んだり、二人で読み合わせをするなど、お客様に説明するように話してみるのも効果的です。

最後まで諦めずに、FP1級学科試験合格者としての実力を発揮できるように頑張りましょう!

ご質問やご意見、間違っている箇所等ございましたら、コメント欄、お問い合わせページ、Xにてお知らせください。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。この記事が、FP1級技能士試験のご参考になれば幸いです。

    Profile  

manabu

   

FP1級技能士、AFP、J-FLEC認定アドバイザー。
日本FP協会 CFP30周年記念プロモーション動画コンテスト 最優秀賞受賞
DTP・Webデザイナー・コンサルタントとして開業や副業のコンサルティング、FP試験のサポートを行っています。
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