公開日 2024年12月13日 最終更新日 2024年12月18日
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【第5問】 次の設例に基づいて、下記の各問( 《問63》~《問65》 )に答えなさい。
《設 例》
非上場会社のX株式会社(以下、 「X社」という)の代表取締役社長であるAさん(75歳)の推定相続人は、妻Bさん(67歳)および長男Cさん(45歳)の2人である。
5年前に製粉会社を退職し、X社に入社した後継者の長男Cさんは、専務取締役として販路拡大に手腕を発揮し、商品開発にも精力的に取り組んでいる。
Aさんは、X社株式の大半を長男Cさんに早期に移転することを検討しており、X社株式の評価額を把握しておきたいと考えている。また、妻Bさんに対しては、Aさんが所有する店舗兼自宅の一部を贈与することで財産の移転を進めたいと考えている。
X社の概要は、以下のとおりである。
〈X社の概要〉
業種 パン・菓子製造業(従業員数23名)
資本金等の額 1,000万円 (発行済株式総数20,000株、 すべて普通株式で1株につき1個の議決権を有している)
株主構成
株主
Aさんとの関係
所有株式数
Aさん
本人
14,000株
Bさん
妻
2,000株
Cさん
長男
4,000株
株式の譲渡制限 あり
X社株式の評価(相続税評価額)に関する資料 ・X社の財産評価基本通達上の規模区分は「中会社の中」である。 ・X社は、特定の評価会社には該当しない。 ・X社の比準要素
比準要素
X社
1株(50円)当たりの年配当金額
8.2円
1株(50円)当たりの年利益金額
55円
1株(50円)当たりの簿価純資産価額
600円
・類似業種比準価額計算上の業種目/比準要素/業種目別株価
業種目
年配当金額
年利益金額
簿価純資産価額
株価
製造業(大分類)
6.8円
40円
358円
384円
食料品製造業(中分類)
7.3円
42円
433円
578円
パン・菓子製造業 (小分類)
8.9円
48円
728円
982円
X社の資産・負債の状況 直前期のX社の資産・負債の相続税評価額と帳簿価額は、次のとおりである。
科 目
相続税評価額
帳簿価額
科 目
相続税評価額
帳簿価額
流動資産
9,000万円
9,000万円
流動負債
3,000万円
3,000万円
固定資産
18,000万円
14,000万円
固定負債
8,000万円
8,000万円
合 計
27,000万円
23,000万円
合 計
11,000万円
11,000万円
※上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。
技能検定試験問題の使用について 出典:一般社団法人金融財政事情研究会 ファイナンシャル・プランニング技能検定 1 級学科試験 2024年9月
《問65》 贈与税の配偶者控除(以下、 「本控除」という)に関する以下の文章の空欄①~⑥に入る最も適切な語句または数値を、解答用紙に記入しなさい。
「本控除の適用を受けるためには、贈与を受けた時において贈与者との婚姻期間が20年以上であることが必要です。また、配偶者から贈与された財産が居住用不動産である場合は、贈与を受けた年の翌年の( ① )までに当該居住用不動産をその者の居住の用に供し、かつ、その後も引き続き居住の用に供する見込みであることが要件とされており、贈与税の申告書を、財産の贈与を受けた日から( ② )日を経過した日以後に作成された戸籍の謄本または抄本、戸籍の附票の写し等を添付して提出する必要があります。
仮に、配偶者から店舗併用住宅(相続税評価額5,500万円、店舗部分60%、居住用部分40%)の2分の1の持分の贈与を受けて本控除の適用を受ける場合、同年中に他の贈与を受けていないときは、贈与税額は( ③ )万円となります。なお、店舗併用住宅の居住の用に供している部分の面積が、その土地等または家屋の面積のそれぞれのおおむね10分の( ④ )以上である場合、その土地等または家屋の全部を居住用不動産に該当するものとしてさしつかえないとされています。
なお、2024年1月1日以降に暦年課税による贈与を受けた者が、当該贈与に係る贈与者の相続において相続人となる場合に、その相続が当該贈与を受けた日の翌日から( ⑤ )年以内に開始したものであるときは、原則として、当該贈与により取得した財産の贈与時の価額を、相続税の課税価格に加算する必要があります。ただし、本控除の適用を受けた財産に係るその控除額に相当する部分の価額は加算対象となりません。また、加算対象贈与財産のうち、相続の開始前3年以内に取得した財産以外の財産については、その財産の価額の合計額から最高で( ⑥ )万円を控除することができます」
〈贈与税の速算表(一部抜粋)〉
配偶者控除および 基礎控除後の課税価格
特例贈与財産
一般贈与財産
税率
控除額
税率
控除額
~ 200万円以下
10%
―
10%
―
200万円超 ~ 300万円以下
15%
10万円
15%
10万円
300万円超 ~ 400万円以下
15%
10万円
20%
25万円
400万円超 ~ 600万円以下
20%
30万円
30%
65万円
600万円超 ~ 1,000万円以下
30%
90万円
40%
125万円
1,000万円超 ~ 1,500万円以下
40%
190万円
45%
175万円
1,500万円超 ~ 3,000万円以下
45%
265万円
50%
250万円
技能検定試験問題の使用について 出典:一般社団法人金融財政事情研究会 ファイナンシャル・プランニング技能検定 1 級学科試験 2024年9月
解答解説 問65
〈答〉 ① 3月15日 ② 10(日) ③ 131(万円) ④ 9 ⑤ 7(年) ⑥ 100(万円)
贈与税の配偶者控除とは、婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、居住用不動産または居住用不動産を取得するための金銭の贈与が行われた場合、贈与税の申告をすることにより基礎控除額110万円のほかに最高2,000万円まで控除(配偶者控除)できるという特例です。
〈答〉① 3月15日
特例の適用を受けるための要件 (1) 夫婦の婚姻期間が20年を過ぎた後に贈与が行われたこと。 (2) 配偶者から贈与された財産が、 居住用不動産であることまたは居住用不動産を取得するための金銭であること。 (3) 贈与を受けた年の翌年3月15日までに、贈与により取得した居住用不動産または贈与を受けた金銭で取得した居住用不動産に、贈与を受けた者が現実に住んでおり、その後も引き続き住む見込みであることです。 (注1) 「居住用不動産」とは、専ら居住の用に供する土地もしくは土地の上に存する権利または家屋で国内にあるものをいいます。 (注2) 配偶者控除は同じ配偶者からの贈与については一生に一度しか適用を受けることができません。
〈答〉② 10(日)
贈与税の申告書に、次の書類を添付する必要があります。 (1) 財産の贈与を受けた日から10日を経過した日以後に作成された戸籍の謄本または抄本 (2) 財産の贈与を受けた日から10日を経過した日以後に作成された戸籍の附票の写し (3) 居住用不動産の登記事項証明書その他の書類で贈与を受けた人がその居住用不動産を取得したことを証するもの
〈答〉 ③ 131 (万円)
店舗兼住宅の持分の贈与を受けた場合は、居住用部分から優先的に贈与を受けたものとして申告することができます。 贈与された割合:50% 居住用部分割合:40% 店舗部分の割合:10%
以下の計算で求めます。 ・居住用部分 5,500万円 × 40% = 2,200万円 居住用部分は配偶者控除が適用できます。 2,200万円 – 2,000万円 = 200万円 ・店舗部分 5,500万円 × 10% = 550万円
贈与を受けた財産 200万円 + 550万円 = 750万円
基礎控除110万円を差し引きます。 750万円 – 110万円 = 640万円
特例贈与財産とは、父母・祖父母などから18歳以上の子・孫などへ贈与する財産です。
一般贈与財産とは、特例贈与財産に当てはまらないすべての財産をいいます。
贈与税の速算表より 640万円 × 40% – 125万円 = 131万円
〈答〉 ④ 9
店舗兼自宅であっても、居住部分の面積が全体の10分の9(90%)以上であれば、全体を居住用不動産として扱うことができます。
〈答〉 ⑤ 7(年)
贈与を受けた日の翌日から7年以内に相続が開始された場合、贈与加算の対象となります。
〈答〉 ⑥ 100 (万円)
相続又は遺贈により財産を取得した方が、その相続開始前7年以内に被相続人から贈与により取得した財産がある場合には、その取得した財産の贈与時の価額を相続財産に加算します。ただし、延長された4年間に贈与により取得した財産の価額については、総額100万円まで加算されません。
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