FP試験問題 法人の生命保険の経理処理を解説します

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きんざいが制作していたFP受検対策に関する書籍は、今後制作・販売されません。

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公開日 2021年4月7日 最終更新日 2024年11月7日

FP1級試験の勉強を始めても、出題範囲が広すぎて何から手をつけていいのかわからなかったり、せっかく覚えても忘れてしまい心が折れることってありませんか?

このサイトでは、私が実践し得点が倍増した勉強方法についてご紹介します。

今回はB. 分野 リスク管理から法人生命保険の経理処理の問題です。

法人生命保険の経理処理の問題は、FP1級試験の基礎編で過去5回のうち、2020年の1月以降3回連続で出題されています。

なぜ、2020年1月試験から3回連続で出題されているかというと、法人生命保険の契約日が2019年7月8日以降の取り扱いから経理処理のルールが大幅に変更になったからではないかと思います。

リスク管理の分野ですが簿記的な要素が強く、簿記を勉強したことがある方なら理解も早いと思いますが、僕の周りの簿記未経験者からは難しいという意見もよく聞きます。

簿記の基礎的な仕組みも一緒に理解するといいかもしれません。

それでは、過去問を解きながら解説していきます。

問題を見る必要がない方は問題を飛ばして解説とポイントからお読みください。

法人生命保険の経理処理の問題 2020年9月13日試験 基礎編 《問12》

X株式会社(以下、「 X社」という)は、代表取締役社長であるAさんを被保険者とする下記の定期保険に加入した。当該生命保険の第1回保険料払込時の経理処理として、次のうち最も適切なものはどれか。

・保険の種類       :定期保険(特約不可なし)
・契約年月日       :2020年4月1日
・契約者(=保険料負担者):X社
・被保険者        :Aさん
・死亡保険金受取人    :X社
・保険期間・保険料払込期間:95歳満了
・死亡保険金       :1億円
・年払保険料       :200万円
・最高解約返戻率     :80%

出典:一般社団法人金融財政事情研究会 1級学科試験、1級実技試験(個人資産相談業務) なお、当サイトの管理人は一般社団法人金融財政事情研究会のファイナンシャル・プランニング技能士センター会員のため許諾申請の必要なく試験問題を利用しています。参考:技能検定試験問題の使用について

法人生命保険の経理処理の問題 2020年9月13日試験 基礎編 《問12解答と解説》

最高解約返戻率が80%の場合、保険開始日から保険期間の40%の日数を経過するまで資産計上額は支払った保険料の60%で、残額を損金算入します。

よって、第1回保険料払込時の経理処理は、支払保険料200万円のうち60%の120万円が前払保険料として資産計上され、残額の80万円が定期保険料として損金算入されます。

〈答え〉 3

〈解説とポイント〉

払込期間中の経理処理の4パターン

法人の生命保険の経理処理は、最高解約返戻率に応じて4つのパターンに分かれます。

①最高解約返戻率が50%〜70%

 資産計上期間:保険期間の前半4割

 資産計上額:支払保険料の40%

 損金算入額:支払保険料の60%

 取崩し期間:保険期間の75%期間経過後全額損金算入


保険期間 当初40%期間の経理処理

支払保険料の40%を前払保険料として資産計上、60%を支払保険料として損金算入します。

借方貸方
支払保険料   1,800,000円
前払保険料   1,200,000円
現金・預金   3,000,000円

保険期間 当初75%期間の経理処理

支払保険料の全額を支払保険料として損金算入します。

借方貸方
支払保険料   3,000,000円
現金・預金   3,000,000円

保険期間 75%期間経過後の経理処理

支払保険料の全額を支払保険料として損金算入するとともに、当初40%期間で資産計上した前払保険料の累計額を均等に取崩した金額のうち、事業年度に対応する金額を支払保険料として損金算入します。

借方貸方
支払保険料   3,600,000円
現金・預金   3,000,000円
前払保険料    960,000円

②最高解約返戻率が70%〜85%

 資産計上期間:保険期間の前半4割

 資産計上額:支払保険料の60%

 損金算入額:支払保険料の40%

 取崩し期間:保険期間の75%期間経過後全額損金算入


保険期間 当初40%期間の経理処理

支払保険料の60%を前払保険料として資産計上、40%を支払保険料として損金算入します。

借方貸方
支払保険料   1,200,000円
前払保険料   1,800,000円
現金・預金   3,000,000円

保険期間 当初75%期間の経理処理

支払保険料の全額を支払保険料として損金算入します。

借方貸方
支払保険料   3,000,000円
現金・預金   3,000,000円

保険期間 75%期間経過後の経理処理

支払保険料の全額を支払保険料として損金算入するとともに、当初40%期間で資産計上した前払保険料の累計額を均等に取崩した金額のうち、事業年度に対応する金額を支払保険料として損金算入します。

借方貸方
支払保険料   4,440,000円
現金・預金   3,000,000円
前払保険料   1,440,000円

③最高解約返戻率が85%

 資産計上期間:保険期間の当初10年間

       :11年目以降最高解約返戻率となるまでの期間

 資産計上額:当初10年間:最高解約返戻率×90%

      :11年目以降最高解約返戻率となるまでの期間、もしくは増加する返戻金の割合が7割超となる期間:最高解約返戻率×70%

 残りの期間:全額損金算入(解約返戻金が最高額になると、以降は資産計上も取り崩して損金算入)


保険期間 当初10年間の経理処理

支払保険料のうち、支払保険料×最高解約返礼率×90%を前払保険料として資産計上、残りを支払保険料として損金算入します。

借方貸方
支払保険料    570,000円
前払保険料   2,430,000円
現金・預金   3,000,000円

保険期間 11年目以降最高解約返戻率となるまでの期間、もしくは増加する返戻金の割合が7割超となる期間

支払保険料のうち、支払保険料×最高解約返礼率×70%を前払保険料として資産計上、残りを支払保険料として損金算入します。

借方貸方
支払保険料    1,110,000円
前払保険料   1,890,000円
現金・預金   3,000,000円

保険期間 残りの期間:全額損金算入(解約返戻金が最高額になると、以降は資産計上も取り崩して損金算入)

上記期間経過後、解約返戻金が最高額となるまでの期間は、支払保険料の全額を支払保険料として損金算入します。解約返戻金が最高額になって以降は、支払保険料の全額を損金算入するとともに、資産計上した前払保険料の累計額を均等に取崩した金額のうち、事業年度に対応する金額を支払保険料として損金算入します。

借方貸方
支払保険料   3,000,000円
現金・預金   3,000,000円
解約返戻金が最高額となるまでの期間
借方貸方
支払保険料   4,440,000円
現金・預金   3,000,000円
前払保険料   1,440,000円
解約返戻金が最高額となって以降

④全額損金計上できる場合

 下記、いずれかの条件に当てはまる場合は全額損金計上できます。

 ④−1 最高解約返戻率が50%以下

 ④−2 最高解約返戻率が70%以下かつ年間保険料が30万円以下

 ④−3 保険期間が3年未満

 

保険金受け取り時の経理処理

死亡保険金を受け取った時

死亡保険金を受け取った場合、それまで資産計上した前払保険料を取り崩し、死亡保険金との差額は雑収入として益金算入します。

借方貸方
現金・預金   10,000,000円
前払保険料   3,500,000円
雑収入     6,500,000円

②解約返戻金を受け取った時

保険契約を解約して解約返戻金を受け取った場合、それまで資産計上した前払保険料を取り崩し、前払保険料よりも解約返戻金が少ない場合は差額を雑損失として損金算入、前払保険料よりも解約返戻金が多い場合には差額を雑収入として益金参入します。

借方貸方
現金・預金   6,000,000円
雑損失     4,000,000円
前払保険料   10,000,000円
           


簿記の基本

借方貸方
支払保険料   1,200,000円
前払保険料   1,800,000円
現金・預金   3,000,000円

借方(左側)に資産、費用。貸方(右側)に負債、収益を記入します。資産から負債を引いたものが資本。収益から費用を引いたものが利益です。

費用とは経費なので、保険料を会社の経費で支払った場合は借方に支払保険料○○円と記載します。

現金は資産なので借方(左側)に記載しますが、減少した場合は反対側に記載するので貸方(右側)に現金・預金○○円と記載します。

支払った保険料のうち一部は資産計上するので借方に前払保険料○○円と記載します。

資産、費用が増加した場合は借方(左側)に、減少した場合は貸方(右側)に記載します。

負債、収益が増加した場合は貸方(右側)に、減少した場合は借方(左側)に記載します。

借方(右側)と貸方(左側)の合計は一致します。

簡単ですが簿記の基本形です

まとめ

法人保険の経理処理は、解約返戻率に応じた損金算入と仕分け処理を理解する必要があります。

その他も、貯蓄性の保険の場合と保証性の保険の場合。受取人が被保険者や被保険者の遺族の場合と法人の場合の違いなど勉強し始めると次から次に覚えることが出てくるので図式化するなど工夫して覚えましょう。

今回の法人生保の経理処理のようにFP1級試験では制度改正があると出題頻度が高くなります。直近の制度改正にもアンテナを張り巡らし、情報を集めましょう。

FP業務は日々勉強し続けなければなりません。合格した後も勉強は続きます。試験問題を完璧に理解して解くことができても勉強し続けないと情報が古くなり、お客様対応時には使えない知識になっている可能性もあります。

最後まで諦めずに実力を発揮できるように頑張りましょう!

ご質問やご意見、間違っている箇所等ございましたら、コメント欄、お問い合わせページ、Twitterにてお知らせください。

最後まで読んでいただきありがとうございました。皆さんのFP1級技能士試験合格を願っています。

    Profile  

manabu

   

FP1級技能士、AFP、J-FLEC認定アドバイザー。
日本FP協会 CFP30周年記念プロモーション動画コンテスト 最優秀賞受賞
DTP・Webデザイナー・コンサルタントとして開業や副業のコンサルティング、FP試験のサポートを行っています。
詳しくはこちらをご覧ください

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コメント (2)
  1. うだっちょ より:

    とても分かりやすい説明ですね。ありがとうございます。
    本年の5月22日1級受検予定です。学習のとても役立ちました。

    1. マナブ より:

      コメントありがとうございます。
      さらにお役に立てるよう頑張ります。
      5月試験、応援しています。

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