FP試験問題 所得税の申告納税額に関する問題を解説します

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公開日 2021年4月11日 最終更新日 2021年7月18日

FP1級試験の勉強を始めても、出題範囲が広すぎて何から手をつけていいのかわからなかったり、せっかく覚えても忘れてしまい心が折れることってありませんか?

このサイトでは、私が実践し得点が倍増した勉強方法についてご紹介します。

今回はD.分野 タックスプランニングから所得税の申告納税額に関する問題です。

所得税の申告納税額に関する計算問題は、FP1級試験の応用編で過去6回のうち3回出題されています。応用編のタックスプランニングの問題は事業所得の計算から課税総所得金額を求める白色・青色申告と略式別表四から法人税額を求める問題のどちらかが出題されるので白色・青色申告と略式別表四の計算式は完璧に覚えておく必要があります。

所得税の申告納税額の計算のポイントは、まず総所得金額を計算する必要があるので事業所得や不動産所得、配当所得や一時所得の計算を覚えることと、損益通算の要件を確認しましょう。

  《問57》 《問58》 《問59》
2021年5月
  1. 略式別表四
8点
  1. 法人税額の計算
6点
  1. 法人税の説明に関する文章の間違っている選択肢を選び適切な内容に訂正する
6点
2021年1月
  1. 所得税の所得控除の説明
  2. 所得金額調整控除の説明
8点
  1. 事業所得の計算(白色申告)
  2. 退職所得の計算
6点
  1. 所得税額の計算
6点
2020年9月
  1. 略式別表四
7点
  1. 法人税額の計算
7点
  1. 給与等の引き上げ、設備投資を行なった場合の法人税額の特別控除の説明
6点
2020年1月
  1. 個人事業の法人成りの説明
6点
  1. 事業所得の計算(青色申告)
8点
  1. 不動産所得の計算
  2. 配当所得の計算
  3. 一時所得の計算
  4. 所得税・復興特別所得税の計算
6点
2019年9月
  1. 略式別表四
7点
  1. 法人税額の計算
7点

間違っている選択肢を選び適切な内容に訂正する

  1. 圧縮記帳の計算
  2. 給与引き上げ、設備投資を行なった場合の法人税額の特別控除の説明
6点
2019年5月

間違っている選択肢を選び適切な内容に訂正する

  1. 雑損控除の説明
  2. 扶養控除の説明
8点
  1. 事業所得の計算
  2. 退職所得の計算
6点
  1. 所得税額の計算(白色申告)
6点

それでは、過去問を解きながら解説していきます。

問題を見る必要がない方は問題を飛ばしてポイントからお読みください。

所得税の申告納税額の問題 2021年1月24日試験 応用編 《問58、59》

《問58》 Aさんの2020年分の①事業所得の金額および②退職所得の金額を、それぞれ求めな さい(計算過程の記載は不要)。〈答〉は円単位とすること。なお、事業所得の金額の計算上、妻Bさんが事業専従者の要件を満たしている場合、事業専従者控除額を控除すること。

《問59》 前問《問58》を踏まえ、Aさんの2020年分の課税総所得金額に対する算出所得税額 (税額控除前の金額)を求めなさい。〔計算過程〕を示し、〈答〉は100円未満を切り捨てて円単位とすること。なお、Aさんの2020年分の所得控除の合計額を300万円とし、記載のない事項については考慮しないものとする。

《設例》
Aさんは、2020年10月に30年7カ月勤めた商社を退職し、個人で小売店を開業した。 会社員時代に培った人脈により、Aさんの人柄をよく知る人たちが懇意にしてくれた こともあり、開業当初から事業は順調に推移した。Aさんが2020年中に得た所得には、給与所得、退職所得、事業所得のほかに、ゴルフ会員権を売却したことによる譲渡所 得と加入していた生命保険契約を解約したことによる一時所得がある。

Aさんの家族および2020年分の収入等に関する資料は、以下のとおりである。なお、Aさんは、2020年は消費税について免税事業者であり、税込経理を行っている。また、棚卸資産の評価方法について、納税地の所轄税務署長に税務上の届出はしていない。

〈Aさんとその家族に関する資料〉
 Aさん    (53歳) :白色申告者
 妻Bさん   (50歳) :専業主婦であったが、2020年11月からAさんの小売業に従事している。
 長女Cさん  (20歳) : 大学生。2020年中に収入はない。
 母Dさん   (80歳) :2020年中に老齢基礎年金70万円と遺族厚生年金90万円を受け取っている。

〈Aさんの2020年分の収入等に関する資料〉
 ⑴給与所得に関する事項
  給与収入の金額 : 900万円

 ⑵退職所得に関する事項
  退職手当等の収入金額 : 2,500万円
  勤続期間: 30年7カ月
  ※Aさんは支払者に「退職所得の受給に関する申告書」を提出している。

 ⑶事業所得に関する事項
  売上高…………………………1,700万円
  仕入高…………………………1,500万円
  売上値引および返品高……100万円
  年初の商品棚卸高…………………0円
  年末の商品棚卸高…………580万円(先入先出法による場合)
          ………… 600万円(最終仕入原価法による場合)
  必要経費※ ……………………500万円
  ※上記の必要経費は税務上適正に計上されている。なお、必要経費には売上原価は含まれていない。

 ⑷譲渡所得に関する事項 Aさんが売却したゴルフ会員権に関する事項は、以下のとおりである。
  取得年月 : 2000年8月
  売却金額 : 300万円
  取得費 : 400万円

 ⑸一時所得に関する事項
  Aさんが解約した生命保険に関する事項は、以下のとおりである。
  保険種類: 一時払変額個人年金保険(10年確定年金)
  契約年月: 2012年8月
  契約者(=保険料負担者): Aさん
  被保険者: Aさん
  解約返戻金額: 480万円
  正味払込保険料: 400万円

※妻Bさん、長女Cさんおよび母Dさんは、Aさんと同居し、生計を一にしている。
※Aさんとその家族は、いずれも障害者および特別障害者には該当しない。
※Aさんとその家族の年齢は、いずれも2020年12月31日現在のものである。


※上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。

出典:一般社団法人金融財政事情研究会 1級学科試験、1級実技試験(個人資産相談業務) なお、当サイトの管理人は一般社団法人金融財政事情研究会のファイナンシャル・プランニング技能士センター会員のため許諾申請の必要なく試験問題を利用しています。参考:技能検定試験問題の使用について

所得税の申告納税額の問題 2021年1月24日試験 応用編 《問58、59解答と解説》

《58》①事業所得

事業所得=売上高−売上原価−必要経費

売上原価=年初の商品棚卸高+仕入高−期末の商品仕入高

・棚卸資産の評価方法について届出をしていないので最終仕入れ原価法を適用

売上原価=0+1,500万円−600万円=900万円

・売上値引および返品高は売上から差し引きます

事業所得=1,700万円−900万円−500万円−100万円=200万円

・事業先住者控除 妻Bさんが授業に従事したのは2ヶ月だけなので事業先住者控除は適用されません。

 〈答え〉 ① 2,000,000円

 


《58》②退職所得

 退職所得=(退職収入−退職所得控除)× 1 2

退職所得控除
 ⒈ 勤続年数が20年以下の期間は1年あたり40万円(最低80万円)
 ⒉ 20年を超える期間は1年あたり70万円

 退職所得=[2,500万円-(40万円×20年+70万円×(31年-20年)}]× 1 2

     =2,500万円-(800万円+770万円)× 1 2

     =(2,500万円-1,570万円)× 1 2

     =465万円

 〈答え〉 ② 4,650,000円


《59》算出所得税額

⑴ 給与所得

給与所得=給与収入−給与所得控除

    =900万円−195万円

    =705万円


⑵ 退職所得

《58》②から
退職所得=465万円


⑶ 事業所得

《58》①から
事業所得=200万円


⑶ 譲渡所得

譲渡所得=譲渡収入−取得費
    =300万円−400万円=▲100万円

ゴルフ会員権の損失は損益通算の対象外のため
譲渡所得=0円


⑷ 一時所得

一時所得=解約返戻金額−正味払込保険料−特別控除50万円

    =480万円−400万円−50万円=30万円


⑸ 所得金額調整控除

所得金額調整控除=(900万円−850万円)×10%

        =5万円

長女Cさんは20歳の大学生でAさんの扶養親族なので
子ども・特別障害者の所得金額調整控除、(給与収入−850万円)×10%が控除される


⑹ 総所得金額

総所得金額=事業所得+給与所得−所得金額調整控除+譲渡所得+一時所得× 1 2

     =200万円+705万円−5万円+0円+30万円× 1 2

     =915万円

所得税の速算表より

9,150,000円−3,000,000円=6,150,000円

6,150,000円×20%−425,000円=802,500円

〈答え〉 802,500(円)


〈学習のポイント〉

所得税の申告納税額の問題は、総所得金額を求めて損益通算し即算表に基づき申告納税額を計算します。ポイントは、それぞれの所得の計算方法と必要経費に算入できる要件を理解することです。2021年1月に出題された問題以外でも不動産所得や配当所得、配当控除、減価償却費や貸倒引当金、貸倒損失、一定の親族に対して支払う家賃等に関する問題もチェックしましょう。

不動産所得

①土地の取得に要した負債の利子相当分は他の所得と損益通算できない
〈例〉不動産収入額:570万円
   必要経費:630万円(負債利子50万円、土地に係るもの30万円)

   不動産所得額=570万円−(630万円−30万円)
         =−30万円 

《解説》
必要経費630万円のうち土地に係るものを差し引いた600万円が必要経費として不動産所得から控除でき、所得から経費を控除した−30万円が他の所得と損益通算できる。
不動産所得=−30万円


②土地に係る利子が不動産所得の損失額より多い場合。不動産所得の損失額は損益通算できない
〈例〉不動産収入額:100万円
   必要経費:120万円(建物の利子80万円、土地に係るもの40万円)

   不動産所得額=100万円−120万円
         =−20万円
   不動産所得の損失額20万円≦土地に係る利子40万円

《解説》
不動産所得の損失額が20万円、必要経費のうち土地に係る利子が40万円と不動産所得の損失額よりも必要経費の土地に関する利息が多い場合不動産所得の損失額は損益通算できない。
不動産所得=0円


③土地に係る利子が不動産所得の損失額より少ない場合、土地に係る利子は全額損金算入できない。
〈例〉不動産収入額:100万円
   必要経費:160万円(建物の利子120万円、土地に係るもの40万円)

   不動産所得額=100万円−160万円
         =−60万円
   不動産所得の損失額60万円>土地に係る利子40万円 

《解説》
不動産所得の損失額が60万円、必要経費のうち土地に係る利子が40万円と不動産所得の損失額よりも必要経費の土地に関する利息が少ない場合不動産所得の損失額は土地に係る利子の金額を差し引いた金額が損益通算できる。
損失額60万円のうち損金算入額は
60万円−40万円=20万円
不動産所得=−20円


配当所得・配当控除

上場株式の配当金は、配当金の金額にかかわらず、申告不要(確定申告をしない)を選択することができます。また、申告分離課税(他の各種所得と分離して税額を算出する)を選択することもできます。
非上場株式の配当金は、配当金が少額の場合のみ所得税について申告不要を選択できますが、住民税は源泉徴収が行われないため、配当金が少額であったとしても申告しなければなりません。

課税方法源泉徴収税率
上場株式の配当金総合課税
申告分離課税
申告不要
20.315%
(所得税および復興特別所得税15.315%、
住民税5%)
非上場株式の配当金
(少額配当の場合)
総合課税
申告不要
20.42%
(所得税および復興特別所得税20.42%、
住民税なし)

配当控除
配当所得以外の課税所得が1,000万円以下か1,000万円超かで異なり、下の表のようになります。

課税総所得金額等控除額の計算
課税総所得金額等控除額の計算1,000万円以下の場合配当所得の金額×10%
配当所得以外の課税所得が1,000万円を超える場合配当所得の金額×5%
配当所得を加えると課税所得が1,000万円を超える場合1,000万円以下の部分の配当所得の金額×10%+
1,000万円を超える部分の配当所得の金額×5%

減価償却費

減価償却(定額法)

取得価額×定額法の償却率× 使用月数 12

・建物・建物付属設備、構築物 無形固定資産は定額法のみ

減価償却(定率法)
未償却残高×定率法の償却率

・償却補償額を下回った年分以降 改定取得価額×改定償却率
・車両運搬具・機械装置・工具・器具及び備品は定率法を選択できる


事業専従者控除

青色申告者が支払った青色事業専従者給与→必要経費に算入

青色申告者控除 65万円(2020年以降、電子申告以外は55万円)
        事業的規模以外 10万円

白色申告者 次のいずれか少ない金額を必要経費に算入

      ⒈ 年間86万円(配偶者以外は50万円)

      ⒉ 事業所得の金額 (専従者の数+1)


貸倒引当金

必要経費に参入した貸倒引当金は翌年の総収入金額に算入

個別評価
・青色、白色申告者が繰入計上。会社更生法、回収の見込みがない場合。

一括評価
・青色申告者が繰入計上。売掛金の一定割合


貸倒損失

法律上の貸倒
・会社更生法、法令規定による整理手続きにより切り捨てられた場合→切り捨てられた金額を必要経費に算入
・債務者へ書面で免除した場合→債務免除した金額を損金算入

事実上の貸倒
・資産状況、支払い能力から回収不能が明らかになった場合→貸金等の金額を必要経費算入

形式上の貸倒
・取引停止から1年経過し、債権額が回収費用より少なく督促しても弁済がない場合→1円の備忘価額を控除した金額を必要経費算入


一定の親族に対して支払う家賃
  1. 生計を一にする親族に支払った利子、家賃等→必要経費にならない
  2. 生計を一にする親族に支払った固定資産税等→必要経費に算入

応用編の問題を解く場合は計算過程の記載が不要な問題でも必ずノートに体裁を揃えて書くようにしています。

何回も同じような問題を同じような体裁に揃えて記載することで視覚や体で覚えることもでき、計算ミスを防ぐこともできます。それに丁寧に計算過程を書くことで少しでも部分点のアピールになればとも思います。

私が実際に使っていた用紙です。

画像をクリックすると拡大します。 注)間違っている箇所もあります(赤字)

まとめ

所得税の申告納税額の計算問題は計算式自体は難しくありませんが、略式別表四の計算問題と同じく問題文が長いのでうっかり要件を見落とし計算ミスする場合や、損益計算の対象にならない項目、総合課税の対象じゃない退職所得などを加えて計算してしまうことがあります。落ち着いて問題文を読むことと要件を整理したり計算単位を円単位にするなどで対策しましょう。

FP1級試験では「どっちだったかなぁ」と迷う場面が多々あります。何度も繰り返し問題を解き色々なパターンに対応できるようにしましょう。

最後まで諦めずに実力を発揮できるように頑張りましょう!

ご質問やご意見、間違っている箇所等ございましたら、コメント欄、お問い合わせページ、Twitterにてお知らせください。

最後まで読んでいただきありがとうございました。皆さんのFP1級技能士試験合格を願っています。

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    Profile  

manabu

   

FP1級技能士、AFP、証券外務員、日商簿記2級。
高校卒業後セガに就職し上京。地元に戻りDTPオペレーターとして印刷会社に就職。
金融機関へ転職しお客様相談やセミナー講師、社員研修を担当。

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