2022年度 第2回 ファイナンシャル・プランニング技能検定1級実技試験 Part1 (2022年9月24日) 過去問解説

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きんざいが制作していたFP受検対策に関する書籍は、今後制作・販売されません。

そこで、僕が実技試験対策本をKindleで出版しました。

開催年度別に3回分を一冊にまとめたPDF版はこちら

公開日 2022年11月23日 最終更新日 2024年1月16日

合格率1割の難関試験、FP1級学科試験。しかし、学科試験を合格しただけではFP1級技能士の称号は与えられません。
FP1級技能士としての資質が審査される。FP1級実技試験が待っています。

実技試験は学科試験と違い合格率8割以上です。だからといって油断していると足をすくわれます。
合格率1割の難関試験突破者が2割も落ちているんですよ。

1級学科の勉強を始める時に、2級や3級の問題集やテキストは本屋さんにたくさん置いてあるのに1級の本はほとんど置いてなく注文して購入した方も多いのではないでしょうか。
FP1級実技試験は学科試験以上に情報量が少なく、テキストも「きんざいの実技試験対策問題集」ほぼ一択です。

そんな、謎多きFP1級実技試験の過去問を解説します。

動画はこちら

試験当日の標準的なスケジュールは以下の通りです。

  1. 控室で待機(待機中は紙媒体の参考書等は見ることができます。電子機器は使えません)
  2. 設例を読む机に移動(約15分間設例を読みます。設例にメモやマーカで印をつけます)
  3. 面接試験室へ移動(心の準備ができたらノックして入室。約12分の口頭試問試験が始まります)
  4. 面接終了後、控室へ移動(次の試験まで待機)

設例を読むところから試験は始まっています。設例を読み理解することもトレーニングだと思って、タイマーを15分間セットしてメモをとりながら読んでみてください。


それでは、設例をお読みください。

2022年度 第2回 ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級実技試験 Part 1 (2022年9月24日)

●設 例●
 Aさん(50歳)は、大都市圏に所在する大手企業に勤務する会社員であり、郊外の X市内の分譲マンションで妻子とともに暮らしている。 Aさんの弟Dさん(46歳)は、郊外のY市内で妻とともに飲食店を営んでおり、 Y市内の賃貸マンションで暮らしている。

 2022年6月、Aさんの故郷である地方都市S市の実家で母親Cさんと2人で暮らしていた父親Bさんが病気により亡くなった。父親Bさんの法定相続人は、Aさん、母親Cさん、弟Dさんの3人である。Aさんが、四十九日法要を無事に終え、そろそろ父親Bさんの相続手続等に着手しなければならないと思っていたところ、病気を患っていた母親Cさんが、長年連れ添った配偶者を亡くしたことによる心労も重なり、2022年8月、後を追うように亡くなってしまった。

 

【相続手続について】
 Aさんは、立て続けに相続が発生し、いつまでにどのような手続をすればよいのかよくわからない。ただ、母親Cさん名義の財産は1,000万円の普通預金のみであったため、 母親Cさんの相続に係る相続税の申告は必要ないと思っている。 先日、両親が取引していた金融機関を訪れた際、担当者から、 「法定相続情報証明制度」を利用すると名義変更の手続を簡略化することができるとアドバイスされた。

 なお、先日、Aさんが実家を整理していたところ、「私が所有するすべての財産を妻Cに相続させる」と書かれた父親Bさんの自筆証書遺言を発見した。母親Cさんは遺言書を残していなかった。

 

【遺産分割について】
 遺産分割については、兄弟で話し合い、等分で相続することで合意した。ただし、父親の相続財産について、残されていた 自筆証書遺言の内容と異なる分割をしても問題がないのか心配している。 また、実家については、 築45年が経過し、 老朽化も激しく、兄弟いずれも今後S市に戻る予定はないことから、敷地とともに売却し、売却資金も等分することにした。

 S市の不動産業者に相談したところ、「実家の敷地は、ちょうどS市内で 2023年3月までに土地を購入したいと言っている人が希望している立地や広さに合致している」 とのことで、6,500万円程度で売却できる見込みとのことである。

 

【父親Bさんの相続財産の概要】(相続税評価額、土地は小規模宅地等の評価減適用前)

  1 現預金 8,000万円  
  2 有価証券 4,000万円  
  3 自宅(Aさんの実家)      
   ①土地(300㎡) 6,000万円  
   ②建物(1977年築) 200万円  
  合計 1億8,200万円  

※父親Bさんの相続に係る相続税額は、約2,300万円(配偶者の税額軽減・小規模宅地等の評価減適用前)と資産されている。

 

(注)設例に関し、詳細な計算を行う必要はない。

 

 

検討のポイント
●設例の顧客の相談内容および問題点として、どのようなことが考えられるか。
●それらの相談内容および問題点を解決するために、どのような提案・方策が考えられるか。
●それらの方策(解決策)のなかで、何を顧客に提案するか。その理由・留意点は何か。
●FPと職業倫理について、どのようなことが考えられるか。

出典:一般社団法人金融財政事情研究会 1級学科試験、1級実技試験(個人資産相談業務) なお、当サイトの管理人は一般社団法人金融財政事情研究会のファイナンシャル・プランニング技能士センター会員のため許諾申請の必要なく試験問題を利用しています。参考:技能検定試験問題の使用について

○○と申します。よろしくお願いします。

よろしくお願いします。
設例をじっくり読んだと思いますが、Aさんの相談内容と問題点について項目だけで構いませんので全てあげてください。

 

相談内容として

  • 立て続けに相続が発生し、いつまでにどのような手続きをすればよいのかわからない。
  • 自筆証書遺言の内容と異なる分割をしても問題ないのか。

問題点は、

  • 納税資金不足が予想されるので、納税資金の準備。
  • 相続税が高額になるので相続税の軽減。
  • 円滑な遺産分割を行うための対策が必要です。
 

それでは、今あげた問題点を解決するためにどのような提案・方策が考えられますか?

相続手続きですが、立て続けに相続が発生した場合、いつまでにどのような手続きをすればよいですか?

相続税の申告義務のある者が、申告書を提出しないで亡くなった場合には、その相続人が申告・納税義務を承継することとされています。
今回のケースでは、母親Cさんが、父親Bさんの相続について、Aさんと弟Dさんが、母Cさんの義務を承継し、申告・納税する必要があります。

申告期限はどうなりますか?

通常の相続税の申告期限は、相続人が相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内です。
Aさんと弟Dさんが、母Cさんの申告義務を承継して提出すべき申告書の申告期限は、母Cさんについて相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内になります。
なお、Aさんと弟Dさんが父親Bさんの相続人として提出する申告書の申告期限は、父親Bさんの相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内ですので、注意が必要です。

母親Cさんの相続にかかる相続税の申告は必要ですか?

母親Cさんの相続の場合は、父親Bさんの相続に伴い、母親Cさんが取得することになる遺産を含めた母親Cさんの遺産に対して相続税の申告要否を検討することになります。

遺産分割協議の内容によって相続税の納税額が変化することも十分考えられますので、専門家と一緒に、遺産分割の仕方に応じたシミュレーションを行うようにアドバイスします。


法定相続情報証明制度とはどういう制度ですか?

相続手続きでは、死亡した方の戸除籍謄本等の束を、相続手続きを取り扱う窓口ごとに提出する必要があります。
法定相続情報証明制度とは、「法定相続情報一覧図」を作成し、戸除籍謄本等の束を登記所に提出すると登記官が認証文付きの「法定相続情報一覧図の写し」を交付します。
交付された「法定相続情報一覧図の写し」は、相続登記の申請手続きや被相続人名義の預金の払い戻し等、様々な相続手続きに利用できるので、戸除籍謄本等の束を何度も提出する必要がなく、相続手続きにかかる相続人・手続きを行う窓口等、双方の負担が軽減されます。

交付された「法定相続情報一覧図」の有効期限は、発行から6ヶ月以内で交付にあたり手数料は徴収されません。
相続手続きに必要な範囲で複数通発行可能で、5年間の保管期間中は再交付請求をすることも可能です。
ただし、再交付請求ができるのは、当初「法定相続情報一覧図」の保管等申し出をした申し出人に限られるので注意が必要です。


相続手続きをしないまま母親Cさんが死亡していますが、父親Bさんの遺言書はどうなりますか?

父親Bさんが死亡した後、母親Cさんが、相続手続きを放置したまま死亡した場合は、母親Cさんの相続人が相続手続きを行うことになります。

父親Bさんが死亡するより前に母親Cさんが死亡していた場合は、遺言書の母Cさんに該当する部分が無効になります。


実家の売却に関して、Aさんにどのようなアドバイスをしますか?

実家の売却に際し税負担をできるだけ抑えるために、一次相続と二次相続の遺産分割協議の内容や、税法上の特例が併用可能かどうか、専門家と連携しアドバイスします。


自筆証書遺言保管制度について教えてください。

自筆証書遺言を法務局に保管できる制度で、保管されている遺言書は家庭裁判所の検認が不要になり相続人等の中で誰か一人でも遺言書情報証明書の交付を受けたり、遺言書の閲覧をした場合には、その他の全ての相続人等に対して遺言書が保管されている旨の通知が届きます。

しかし、証人がいないので自筆証書遺言の内容の有効性が争われたり、代理人では保管の申請はできず必ず本人が法務局に出向く必要があるので注意が必要です。


⒋ 最後に、FPが守るべき職業倫理を6つあげてください。

⑴顧客利益の優先、⑵守秘義務の遵守、⑶顧客に対する説明義務、⑷インフォームドコンセント、⑸コンプライアンスの徹底、⑹FP自身の能力の啓発です。

どれもFPにとっては大事なことだと思いますが、今回のケースでは特にどれを重視しますか?

今回のケースでは、インフォームドコンセントを重視します。

通常の相続手続きでも大変ですが、立て続けに相続が発生し手続きも複雑になります。
Aさんは、大都市圏に所在する大手企業に勤務しており、実家からは離れて暮らしているので、時間的にも体力的にも相続手続きは大変だと思います。
時間がかからないように、寄り添ったわかりやすく丁寧な説明を行い、必ず同意を得て提案することを重視します。

質問は以上です。お疲れさまでした。

ありがとうございました。失礼いたします。


今回は、数次相続に関する設例でした。

小規模宅地等の特例や、空家に係る譲渡所得の特別控除の特例、取得費加算の特例などは定番の質問なので、制度の概要はもちろんですが、それぞれ併用できるのか、配偶者と配偶者以外の相続人で要件が違うところを覚えておくとさそうですね。

小規模宅地等の特例居住用不動産の3,000万円特別控除取得費加算の特例
対象不動産相続した居住用不動産居住用不動産相続した不動産
特例を使える人配偶者・同居人・3年間借家住まいの相続人自宅を売却した人相続税を支払った人
控除額330㎡まで80%3,000万円支払った相続税のうち不動産売却に対応する金額
売却期限配偶者以外は相続開始から10ヶ月間は売却できない住まなくなって3年経過する日の年末相続開始の翌日から3年10ヶ月以内
空家に係る譲渡所得の特別控除と併用可能可能不可

FP1級実技試験の難しさは「自分の言葉で相手に伝える」ことだと思います。何度も声に出して読み、お客様に説明するように話してみるといいと思います。

最後まで諦めずに実力を発揮できるように頑張りましょう!

ご質問やご意見、間違っている箇所等ございましたら、コメント欄、お問い合わせページ、Twitterにてお知らせください。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。この記事が、FP1級技能士試験のご参考になれば幸いです。

    Profile  

manabu

   

FP1級技能士、AFP、証券外務員、日商簿記2級。
日本FP協会 CFP30周年記念プロモーション動画コンテスト 最優秀賞受賞
DTP・Webデザイナー・コンサルタントとして開業や副業のコンサルティング、FP試験のサポートを行っています。
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